アレルギー予防1


食物アレルギー感作モデルを用いた魚肉ペプチドの経口感作抑制効果
〜離乳直後および成獣到達マウスにおける魚肉ペプチド給餌の影響〜

実験協力&データ提供:関西大学 化学生命工学部 生命・生物工学科 福永健治教授
少量の魚肉ペプチド摂取はアレルギーの低減に効果がある

【背景】
食品アレルギーは、食品として摂取した抗原が、消化されないまま消化管経由で体内に取り込まれ、免疫反応が過剰になることで起こる。即時型アレルギーでは、食品抗原の刺激による特異IgE抗体産生(経口感作)の有無がアレルギー発症を左右する為、これを抑制することが食品アレルギーの有効な予防・治療法と考えられる。本実験では離乳直後マウスと成獣到達マウスを用いてアレルギーを誘発する可能性が高い食品タンパク質の経口投与により、IgE応答を誘導し、魚肉ペプチド(FP)の投与による感作抑制能について評価した。 


【方法】
実験動物 B10A系の雌マウス各群7匹(試験飼料給餌開始時 離乳直後マウス:4週齢、成獣到達マウス 8週齢)
飼育条件 室温23±2℃、湿度50±5%、12時間ごとの明暗
試験餌料 control群;AIN93G標準餌料 (カゼインがタンパク質源、全体の20%)

FP 2%群;AIN93G標準餌料中のカゼインの10%をFPに置換、餌料重量に対し2%(w/w)となるように調製

FP 5%群;AIN93G標準餌料中のカゼインの25%をFPに置換、餌料重量に対し5%(w/w)となるように調製

FP10%群;AIN93G標準餌料中のカゼインの50%をFPに置換、餌料重量に対し10%(w/w)となるように調製
飼育期間 AIN93G標準餌料による予備飼育終了後、試験餌料により16週にわたって飼育
抗原投与 抗原リゾチームを250μLの生理食塩水に25mg溶解し、予備飼育最終週に1日1回7日間胃に投与
抗体測定 血清中の抗原特異的IgE抗体は市販の酵素標識した抗マウスIgEを用いたELISA法により測定飼育期間中4週間(初期は2週間)に1度採血した。


【結果】
血清の抗リゾチーム抗体を測定した結果を図1(離乳直後マウス)および図2(成獣到達マウス)に示した。control群ではどちらのマウスも初期から抗体の産生量が多くなった。試験餌料群では離乳直後マウスではFP2%および5%群で効果的に過剰免疫の抑制が認められたが、FP10%群ではわずかに抗体の増加が観察された。これに対し、成獣到達マウスではFP投与各群間で有意な差はみられなかった。


【まとめ】
本研究の結果から、離乳直後に少量でもFPを給餌し続けることは抗体量の低減につながるが、多量摂取は逆効果であること、成熟後は少量でも給餌し続けることによって抗体量の低減が可能であることがわかった。これらのことから、少量のFP摂取でも、アレルギー抗体量の低減に効果があると考えられる。