疾病予防2


魚肉ペプチドの移植ガン定着抑制に関する研究

実験協力&データ提供:関西大学 化学生命工学部 生命・生物工学科 福永健治教授

【背景】
魚肉ペプチド(FP)の移植ガン進展抑制は低用量で確実に高い効果が得られた。移植ガン抑制試験を行うにあたりマウスに腫瘍移植後7日経過時点で、移植細胞が定着していることを確認したため非常に再現性が高い実験系が得られている。これらの検討の中で、各個体によって腫瘍定着率に差があることに気づいた。そこで、あらかじめFPを給餌した場合の移植ガン定着に対する影響を検証した。

【方法】
実験動物 離乳直後雄BALBc/nunuマウスを用いた。
実験餌料 離乳直後からAIN93GをもとにFPを餌料重量の2.5または10%(w/w)添加した餌料を給餌し、AIN93Gをコントロールとして8週齢まで飼育した(n=30)。
8週齢到達時点で個体平均体重が0.3×標準偏差のマウスを各群20匹選出し、SP2マウス骨髄腫細胞(5×105/0.05ml/個体)を移植した。移植後はコントロール用のAIN93Gを給餌した。   
これまでの実験結果および予備実験で、本実験の4倍の移植細胞数でも移植後14日において腫瘍が確認できない個体は、それ以降、腫瘍の成長がみられないことを確認しているので、移植後14日をエンドポイントとして定着有無を判断した。移植後14日時点で腫瘍長径、短径をノギスで測定し、腫瘍重量は、腫瘍の長径×短径×短径×0.5によって算出した。その後60日間死亡に至るまでの日数を記録した。


【結果】
移植後14日で腫瘍が定着している個体数および定着個体の腫瘍重量を表1に示した。表1より、予めFPを給餌することが、腫瘍の定着、腫瘍の増殖抑制に非常に有効であるといえる。さらに、移植後はコントロール用の餌料を給餌していることから、ガン定着抑制効果は移植前の生理状態によって作用されると判断できる。これらのことより、定着抑制の可能性として、免疫増強作用と解釈するのが妥当である。
図2に各試験餌料群の生存曲線を示した。生存期間はFP給餌群において延長が認められた。FP低投与群では腫瘍消失個体はなかったが、14日時点で腫瘍が確認された個体に、徐々に増殖が確認された。これに対して、FP高投与群では、28日時点で腫瘍消失個体や、42日時点まで腫瘍の成長のない個体が存在した。
 

【まとめ】
FPはガン抑制効果に関し、初期においては免疫増強による腫瘍細胞排除作用、一旦増殖を開始した場合においては、免疫の増強及び血管新生抑制が複合的に作用していることが予想される。