疾病予防5


魚肉ペプチド給餌による老齢マウス細胞性免疫回復効果の検討

実験協力&データ提供:関西大学 化学生命工学部 生命・生物工学科 福永健治教授
老齢マウスにおいても魚肉ペプチドには免疫増強作用がある

【背景】
これまでに移植ガンモデルマウスにおいて、魚肉ペプチド(FP)給餌により腫瘍の定着が抑制されることが確認された。また、FPのガン抑制効果に関する研究の一環として、実験的免疫不全誘導マウスの抗体産生能に及ぼす影響について検討したところ、FPの給餌量に比例して、体細胞免疫能力の回復効果が確認された。
高齢者において、一般的に体液性免疫が保持されているにも関わらず、T細胞を中心とする細胞性免疫の低下はよくみられる。そのため、ガンや感染症など細胞性免疫によって抑制されている疾患は、高齢であることが危険因子となる。そこで本研究では、老齢マウスを用い人為的に細胞性免疫機能を破壊した場合における、FP給餌の影響について検討を行った。


【方法】
実験動物 73週齢のBALB/cAJcl雄マウスを用いた。飼育に関しては前回の実験と同様に12時間おきの明暗サイクル、温度、湿度が制御された環境下で餌料および水は自由摂取とし、2週間の馴化後、実験に供した。免疫不全状態の作出には、マイトマイシンC(MMC)を用い、MMC 1mg/kg体重の用量で7日間連続腹腔投与した。対照群には等量の生理食塩水を投与した。
試験餌料 AIN93G組成に従い、標準タンパク質であるカゼインの一部をFPで置換し、餌料重量に対して2.5%および10%(w/w)になるようにFPを添加したものを試験餌料とした。
試験群の給餌条件 各群73週齢から、標準餌料(AIN93G)または試験餌料を給餌し、75週齢になるまで飼育した。MMC処置後は、標準餌料を給餌した群をMMC-1、継続して試験餌料を給餌した群をMMC-2とした(図1)。
測定・検出 MMC投与終了後2週目における脾臓重量の測定とマウス脾細胞を用いて免疫増強の指標となる抗体産生細胞(PFC)の検出を行った。PFCの誘導にはヒツジ赤血球を抗原として用いた。


【結果】
対照群におけるPFCは287±54個/106脾臓細胞検出されたのに対して、対照群MMCは32±7個/106脾臓細胞であった。若齢マウスに比べ、MMC未処理でも細胞の絶対数が少ないこと、免疫抑制も強く誘導されていることが分かった。MMCによる免疫抑制が、若齢マウスに比べ顕著にかつ、確実に起こっていると判断した。FP2.5および10%MMC-1群では、若齢マウスには及ばないものの、対照群MMCに比べ回復が早い傾向にあり、10%でより回復が早いことが分かる。これらの結果は、老齢マウスでもMMCによって低下したPFC産生能がFPをあらかじめ給餌することによって回復が早くなることを示している。また、MMC処置後も各試験餌料を給餌したFP2.5%MMC-2およびFP10%MMC-2群ではMMC-1群に比べて有意に回復が早く、FPの免疫回復効果は、老齢マウスでも継続的給餌によってより高められることがわかった(図2)。

【まとめ】
本研究により、老齢マウスにおいてもFPの摂取により、免疫回復が早まることが示唆された。