「かまぼこ」は認知症の予防に効果的である!
【主任研究者】 小嶋 文博  2005年


研究タイトル:かまぼこ製品の認知症予防の効果

【研究目的】
高齢化社会となり、アルツハイマー病をはじめとする認知症患者の数も急上昇すると予想されている。認知症患者と健常者の食生活に関する疫学調査から、アルツハイマー型認知症患者は健常者に比べて魚の摂取が非常に少ないということが分ってきた。

このことから、認知症を予防するには魚を多く摂取することが有効だろうと予想される。魚を摂取することのよい点は、DHAなどのn-3系多価不飽和脂肪酸を摂取できる点であると考えられている。かまぼこは平安時代より食されている、魚蛋白質の変性を利用した日本伝統の加工食品である。そこで、ここでは既知のDHAではなく、かまぼこに含まれる魚蛋白質に注目し、認知症予防の観点からその機能性を評価してみることにした。

【研究成果】
DHA等の影響を取り除くためにかまぼこを十分脱脂し洗浄した後、残ったかまぼこ蛋白質を消化酵素(蛋白質分解酵素)であるトリプシンで分解を行った。これにより私達がかまぼこを食べた場合と同じようなペプチドの混合物が得られたものと考えられる。
このペプチド混合物を、ラット胎児脳から得て培養したアストログリア細胞(神経細胞の一種)の培養液中に添加し、アストログリア細胞が作り出す神経細胞の栄養剤である神経成長因子の量にどのような影響があるかを調べてみた。

その結果、かまぼこペプチドを添加しない「対照」と比べて、かまぼこペプチドを添加した各群(3種のかまぼこを使用)では神経成長因子の産生量が有意に増加し、その活性の強さはエピネフリンと同等あるいはそれを上回る強さであった。このことから、かまぼこを摂取することは神経細胞の健康維持に必要な神経成長因子産生量の増加に役立ち、かまぼこは認知症の予防に効果的であることが期待できる。