マウスの鉄代謝に及ぼす魚肉ペプチド給餌の影響
実験協力&データ提供:関西大学化学生命工学部生命・生物工学科福永健治教授
魚肉ペプチドの摂取によって鉄吸収・代謝が促進される可能性がある
【背景および目的】
魚肉ペプチド(FP)は、免疫賦活化、有害物質の排泄促進、胆汁酸排泄促進、血中脂質成分の正常化作用などさまざまな生
理活性を有することが明らかになってきている。現在、厚生労働省が認可する特定保健用食品としてコレステロールの吸収
抑制作用を表示認可された数種の食品にも匹敵するレベルの効果が期待できることも事実である。また、いわゆる栄養補助
食品として市場に多く流通し、コレステロールあるいは脂肪の吸収抑制効果を期待して減量を目的に市販される物質の多く
は食物繊維的作用を発揮するものが多い。しかし,これらの効果を有する物質は、微量金属の吸収に影響を与える可能性も
否定できない。FPも食物繊維と同様に微量元素の吸収率低下、排出促進作用を示し、その代謝に影響を与える可能性もあ
る。そこで、生体組織への酸素供給を担うヘモグロビンの構成元素として重要な鉄の吸収におよぼすFP摂取の影響について
明らかにすることを目的にマウスを実験動物に用いて検討した。
【方法】
実験動物 |
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離乳直後の3週齢のddyマウスを各群10匹ずつ使用 |
飼育条件 |
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気温;20〜22℃、湿度;50%、明暗;12時間周期、餌料および水は自由摂取 |
餌料 |
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対照群;AIN93G標準餌料
FP2.5%;AIN93G標準餌料中のカゼインをFPに置換し、餌料重量に対して2.5%(w/w)となるように調製
FP10%;AIN93G標準餌料中のカゼインをFPに置換し、餌料重量に対して10%(w/w)となるように調製
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試験給餌期間は28日とし給餌期間中、毎日試験餌料の残量、1週間ごとに体重の計測した。また、マウスの鉄吸収、すなわち鉄栄養状態への影響の評価は、血中ヘモグロビン量、血清鉄飽和率を測定した。
【結果】
給餌期間中を通して各群間で、摂餌量、摂水量に差は認められなかった。給餌期間中における体重増加は各群間で有意な差は認められなかったが、10%(w/w)のFP添加群で試験餌料給餌14日以降の体重増加量が少ない傾向にあった(図1)。 |
図1.給餌期間中の体重の変化 |
図2.マウス血中ヘモグロビン濃度におよぼす魚肉ペプチド(FP)給餌の影響.ヘモグロビン濃度は平均±標準偏差(n=10)で示した。 |
図3.マウス血清鉄飽和率におよぼす魚肉ペプチド(FP)給餌の影響.血清鉄飽和率は平均±標準偏差(n=10)で示した。 |
血中ヘモグロビン濃度は各群間で有意な差は認められなかったが、FP10%群でわずかに高い傾向にあった。一方、血清鉄飽和率は各群間で有意な差は認められなかったが、10%(w/w)のFP添加群で低い傾向にあり、個体によるばらつきが認められた(図2)。
血清鉄飽和率は、全群が正常範囲の25〜30%に入っており(図3)、貧血につながるような鉄吸収、代謝へのFP摂取による影響はないと考えられる。また、FP10%群では僅かではあるが,ヘモグロビンは増加、鉄飽和率が減少傾向にあることから、鉄の代謝を促進する、すなわち利用性を亢進させる可能性が示唆された。
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