ラット腸管ループ二重結紮法を用いた魚肉ペプチドの鉄吸収促進作用の評価
実験協力&データ提供:関西大学化学生命工学部生命・生物工学科福永健治教授
魚肉ペプチド摂取は十二指腸および血中への鉄の取り込みを促進する
【背景および目的】
魚肉ペプチド(FP)は、免疫賦活化、有害物質の排泄促進、胆汁酸排泄促進、血中脂質成分の正常化作用などさまざまな生理活性を有することが明らかになっている。これまでに生体組織への酸素供給を担うヘモグロビンの構成元素として重要な鉄の吸収におよぼすFP摂取の影響についてマウスを実験動物に用いて検討してきた。その結果、FP10%(タンパク質の50%を置換)群では、ヘモグロビンは増加、血清鉄の鉄飽和率が減少傾向にあることか
ら、鉄の代謝を促進する、すなわち利用性を亢進させる可能性があると考えられた。そこで本研究では、鉄の吸収に及ぼす影響を腸管ループ二重結紮法によってFPの鉄吸収促進作用を確認することとした。
<鉄吸収促進部位に関する検討>
【方法】
実験動物: |
6週齢のWistarラットを各群6匹ずつ使用 |
腸管ループ二重結紮法: |
ラットを一晩絶食させた後にネンブタール(ペントバルビツール)麻酔下において開腹し、ラット腸管の任意2ヵ所を糸で結紮しソーセージ状のループを作製した。それぞれ胃に近い部位から十二指腸、空腸、回腸部位とした。 |
試験液注入: |
145mM NaCl-5mM FeSO4に等量のカゼイン(Control)またはFPを混合し、それぞれの部位のpHに調整後、0.3mlを注射器を用いてループ状腸管管腔内に注入した。 |
鉄吸収率評価: |
試験液投与の一定時間後にラットの腸管ループ部分を切り出し、1%塩酸に溶解して腸管管腔内に残存する鉄量を原子吸光法(島津AA-640・12型原子吸光光度計)により測定し、以下の式により鉄吸収率を算出した。
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血液中への鉄取り込み評価: |
FPの鉄吸収促進効果が確認できた十二指腸に残存した鉄量を測定することで、血中に放出された、すなわち取り込まれた鉄量を以下の式に従い算出した。 |
【結果】
図1.魚肉ペプチド(FP)投与時の十二指腸部位における鉄吸収率.
値は平均値±標準偏差(n=6)で示した.*p<0.05. |
図2.魚肉ペプチド(FP)投与時の空腸部位における鉄吸収率.
値は平均値±標準偏差(n=6)で示した. |
図3.魚肉ペプチド(FP)投与時の回腸部位における鉄吸収率.
値は平均値±標準偏差(n=6)で示した. |
図4.十二指腸部位における鉄の血中への取り込み. |
十二指腸部位では有意な鉄吸収率の増加がみられ、FPの鉄吸収促進効果が確認された(図1)が、空腸、回腸ではいずれの部位においても鉄吸収率の増加は確認できなかった(図2,3)。また、Controlと比べてFP群では鉄の血中への取り込み量も高いことがわかった(図4)。 |
【まとめ】
FPは十二指腸からの鉄の吸収を促進し、その鉄は十二指腸細胞内にとどまらず、すみやかに血中へ放出されることが示された。
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