運動2


持久的運動後の魚肉ペプチド摂取がラット骨格筋のmTORシグナル伝達に及ぼす影響

実験協力&データ提供:順天堂大学 スポーツ健康科学部 運動生理学研究室 内藤久士 准教授  柿木亮
運動直後に糖質と魚肉ペプチドを摂取すると筋タンパク質合成の刺激が促進される

【目的】
骨格筋の肥大や筋損傷からの素早い回復には、骨格筋細胞のタンパク質合成を刺激することが重要である。近年、この骨格筋細胞のタンパク質合成に関与するmTORや4E-BP1が細胞内のシグナル伝達に重要な役割を担っており、運動や栄養摂取そのものが、このシグナル伝達を活性化することが明らかにされている(図1)。本研究では運動直後の魚肉ペプチド(以下FP)摂取が筋タンパク質合成に関与するmTORシグナル伝達に及ぼす影響について検討した。 
 



【方法】
実験動物 SD雄性ラット各群4または5匹(8週齢)
予備飼育条件 室温23±1℃、湿度55±5%、12時間ごとの明暗 水と標準的なラット用飼料を自由摂取
実験プロトコル 1週間予備飼育したラットを実験前日から12時間絶食状態にし、本試験に使用。
運動群には、持久的な運動としてトレッドミル走(速度13 m/分 傾斜角度0度 120分間)を実施。
運動終了直後に栄養物を経口投与、運動30分後に下腿骨格筋を摘出し、分析(図2)。
栄養物 水のみ、糖質(ブドウ糖)23.7% wt/volのみ、または同濃度糖質とカゼイン,大豆ペプチド(以下SP),FPのいずれかを7.9% wt/vol含む水溶
投与量 体重1kgあたり 糖質0.9g カゼイン,SP,FPのいずれかを0.3g(表1)。



【結果】

運動30分後の腓腹筋白筋部のmTORリン酸化レベルを図3に、4E-BP1過剰リン酸化レベルを図4に示した。mTORリン酸化レベルは、コントロール群と比べて糖質+FP摂取群のみが、有意に高い値を示した。また、運動により4E-BP1過剰リン酸化レベルが低下する傾向があったが、栄養物を摂取した群では、糖質+カゼイン摂取群、SP摂取群およびFP摂取群のリン酸化レベルは水群と比べて有意に高い値を示した。



 

【まとめ】
本研究の結果から、持久的運動後に糖質と魚肉ペプチドを同時に摂取すると、骨格筋のmTORシグナル伝達経路が活性化され、タンパク質の合成を促進する可能性が示唆された。