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ラット脂質代謝系に及ぼす魚肉ペプチド給餌の影響3 魚肉ペプチドによる血中コレステロール低減作用 実験協力&データ提供:関西大学 工学部 生物工学科 食品工学研究室 福永健治助教授 【目的】 近年、食品タンパク質由来ペプチドが血圧降下作用や代謝促進、疲労回復効果など様々な生体調節機能を有することが明らかとなってきた。本研究では魚肉タンパク質を酵素分解して得られる魚肉ペプチドによる血中コレステロールの低減作用について検証した。 【方法】 実験動物として4週齢のWistar雄ラットを各群7匹ずつ用いた。試験飼料は標準飼料としてAIN93G組成に準拠したものを対照群用の飼料とし、標準飼料中のタンパク質源であるカゼイン(飼料中20%含有)のうち20%および50%を魚肉ペプチドに置換した飼料をそれぞれ、魚肉ペプチド低群および高群とした。さらに、高コレステロール食を摂取した場合に魚肉ペプチドが及ぼす効果を評価するため、上述の飼料にさらにコレステロールを0.5%添加したものを試験 飼料とし、合計6群を設定した。 各実験群は一定条件下(室温23±2℃、湿度50±5%、12時間ごとの明暗、飼料、水は自由摂取)で飼育した。対照群用飼料で7日間の予備飼育後、各試験飼料で4週間飼育した後、血清中のコレステロール含量を測定した。 【結果】 総コレステロールはコレステロールの添加によって各群増加が見られるが,その割合は顕著なものではなく、コレステロール代謝上恒常性が働いている範囲内での付加実験であったといえる。コレステロール非添加群についてみるとコントロール群に比べ魚肉ペプチド低、高群いずれにおいても有意な低下が観察された。これはEPAやDHAでは明確に得られない、魚肉ペプチドに特徴的な効果である。 LDLコレステロールはいわゆる悪玉コレステロールとよばれ、過剰に存在すると動脈硬化発症の原因となる。コレステロール添加群では魚肉ペプチド給餌によるLDLコレステロールの有意な低下が確認できた。一方、コレステロール非添加群についてみると、魚肉ペプチド高群で有意な低下がみられた。 HDLコレステロールは過剰なLDLコレステロールを回収するいわゆる善玉コレステロールである。魚肉ペプチド給餌によるHDLコレステロール含量の群間の有意な差はなく,絶対量についてもほとんど差はなかった。コレステロール添加の影響も見られなかった。 以上の結果から、魚肉ペプチドには血中の悪玉コレステロールを低減させる作用があることが示唆された。 |